膨大な予算を組んで開発維持される近代兵器などが、専ら「軍事用」であるのに対し、
日本刀は軍事用であると同時に、高度に「軍政用」としての役割をも担っている。
天下の公益から小遣いをせしめて我が身元に止め置く、民間の資産家(素封家)こそは
社会的責任を十分に負わない小僧っ子も同然の存在だといえる。もちろんだからといって
即座に取締りの対象とするとまでもいかず、稼ぎ方が極端にあくどい場合などに限って
取締りの対象ともすることが社会的常識に適った措置ともなる。ただ、致命的に
問題なのは、そのような社会的責任を十分に負わない素封家と、天下国家全社会の
責任を負うことが本来の義務である為政者とが結託して、為政者までもが素封家並みに
社会的責任を十分に追わなくなる、政財癒着の腐敗が深刻化することだといえる。
そこで、徒手の相手をほぼ確実にしとめられるだけの攻撃力を備えながら、管理維持
にはほとんど金銭的な負担がかからない日本刀のような軽武器が、重要な役割を持ってくる。
見た目にも長大でいかめしく、それに守られることには全幅の信頼が置ける一方、
それで攻撃されるともなれば最大級の恐怖を催させる、日本刀に独特の特徴こそは、
主君への忠誠を誓う武士が金持ちを特定して威し付けておく上で、最適なものだったのである。
高度に「軍政用」としての役割を担う武器としては、未だ日本刀に勝るものはない。
武器や兵器が軍事だけでなく、軍政にかけてこそ有効な役割を担い得ることを近現代の人間は
全く見落としたままでいるが、日本刀に次ぐものであれ、日本刀を超えるものであれ、軍政に
かけてこそ有効な役割を担う武器や兵器の開発にもう少し力を入れてもいいのではないかと思う。
返信する